技術情報

入学・卒業で考えるライセンスのこと

早いもので 3月が終わり、4月から新年度が始まります。ご卒業される皆さん、そして進学をされる皆さん、おめでとうございます。

大学入学のタイミングで、PC 購入をされた方が多かったことと思います。購入後、さまざまソフトウェアをインストールするわけですが、この記事をきっかけに意識していただきたいのが、ソフトウェアを使える権利(ソフトウェアライセンス)のことです。

ソフトウェアを二つの観点から見てみよう

2021年3月現在では、多くのソフトウェアは、ダウンロード版をサブスクリプションで使ってもらうように作られています。それでは、ソフトウェアを購入・導入する例を、「提供の仕方」「使える期間」という二つの観点から見てみましょう。

提供の仕方

最近のソフトウェアは、パッケージ版(製品版・ディスクやカセットとして物理的に購入するもの)ではなく、ダウンロード版(ネット上で作ったアカウントと関連付けられていて、ダウンロードして利用するもの)で提供されることが多いです。

かつては、インストール用の CD/DVD が入っているソフトウェアの箱を買うことが多かったのです。今はソフトウェアの箱を買う機会は少なくなり、ソフトウェアは指定された URL からダウンロードして PC に入れる例が多くなりました。

ゲーム機を例にとると、Nintendo Switch 向けのソフトにもパッケージ版とダウンロード版があります。

パッケージ版だとお子さんへの贈答品に使えますし、子どもたちの中でのソフトの貸し借りが出来ますが、紛失したらそれっきりです。一方、ダウンロード版だと、ソフト発売日に直ぐ使えたりロード時間が短かったりするメリットがありますが、ソフトを中古ショップで売ることはできません。

使える期間

ソフトウェアを使う権利(ソフトウェアライセンス)には、「永続ライセンス版」「サブスクリプション版」があります。

永続ライセンス版は、一度ソフトウェアライセンスを買うと、そのバージョンのソフトウェアをずっと使い続けられます。追加費用が掛からない一方で、最初に払うライセンス費用が高く、また将来新しいバージョンが出てもそれを使う権利を持っていないので使えません。

サブスクリプション版は、月額または年額でライセンス費用を払うことで、いつでも最新バージョンのソフトウェアを使い続けられます。初期費用がほとんどかからない一方で、ライセンス費用を払い続けなければならず、支払いを止めると使えなくなってしまいます。

2021年3月現在、Microsoft Office には、永続ライセンス版の Office 2019 と、サブスクリプション版の Microsoft 365 があります。名前が似ているので、区別がつきにくいですね。

Microsoft 365 と Office 2019 の違いは何ですか。

また、クリエイティブ系ソフトウェアで有名な Adobe でも、かなり前から CC (Creative Cloud) と名前の付いた、サブスクリプション版を販売しています。

Adobe Creative Cloudについて【アドビ公式】

今はソフトウェアの世界だけでなく、幅広いところで「サブスクリプション(通称サブスク)」という言葉を聞くようになりました。

映像配信(Amazon プライム・ビデオ, Netflix, Hulu, dtv, U-NEXTなど)、音楽配信(Apple Music, Spotify, AWA, Amazon Music Unlimited など)のほかに、ゲーミング PC サブスク、餃子サブスク、家具家電サブスクなど、所有の概念を離れて広がりを見せています。

入学で知っておきたいライセンスのこと

学校提供の教育機関向けソフトウェアが使えます

中学生・高校生・その後の進学では、主に「学生版」が学校から提供されるケースが多いです。この場合、ライセンス費用が発生する場合は、学費または諸費用として学校に納めることになります。

学校の多くは、生徒・学生一人ひとりにアカウントを発行しますので、このアカウントに紐づいたダウンロード版・サブスクリプションのソフトウェアが使えるという仕組みです。在学中は、自らソフトウェア購入しなくても使えますから、とても便利ですね。

4月から新しい学校へ通う皆さんは、新入生ガイダンスなどで、こういったアカウントやソフトウェアに関する操作講習やインストール指示を受けることになるでしょう。最初は少し手間がかかりますが、落ち着いてやれば大丈夫。応援しています(もし困ったら、お声掛けください)。

学生個人で利用するソフト・ハードが使えます

在学中は在学証明書や学生証を提示することで、アカデミック版のソフトウェアやハードウェアを無償利用できたり、購入できたりします。これらは、学校から提供されるものではなく、あくまで個人での手続きが必要です。また、物によっては利用目的が限られている場合(自宅での自習など)がありますから、注意してください。

Adobe Creative Cloud学生・教職員個人向け | Adobe Creative Cloud Students Student and Education Software | 1-Year License | Autodesk Education Community 学生・教職員価格と学生割引

卒業で気を付けたいライセンスのこと

教育機関向けソフトウェアライセンスが失効します

さて、入学と共に発行されたアカウントは、卒業時に削除されますから、その結果、ソフトウェアを使う権利(ライセンス)が失効してしまうため、ソフトウェアが使えなくなります。

Microsoft Office を例にお話しします。在学中は学校から提供された教育機関向け Office (Office 365 for Education) を使っていて、卒業後も Office ソフトウェアを使う場合は、ご自身で Office ソフトウェアライセンスを永続ライセンスまたはサブスクリプションで購入してください。

学生個人利用していたソフトウェアもライセンス購入が必要

また、学生個人で利用していたソフトウェア(アカデミックソフトウェア)も、ライセンス購入が必要です。サブスクリプション版で利用していたものであれば、卒業後の 4月から支払いが必要になってきます。まだお給料がもらえる前かもしれないのですが、これは致し方ありません。

学生個人利用で購入したソフトウェア(アカデミックソフトウェア)の中には、永続版があるかもしれません。この場合、利用規約次第では個人利用が引き続き許可されている可能性がありますが、規約に違反する使い方は出来ません。規約違反につながる代表的な例は、アカデミックソフトウェアを、会社の PC にインストールするといった例です。これが規約違反になるのは、教育目的で提供されたものを、商用利用するためです。規約をよく読み、違反の無いようにしていきましょう。

新年度を迎えるにあたり

コンピュータを使う上で、とても身近なソフトウェア。それを使う権利について、今回はまとめました。新年度を迎えるにあたり、少し気に留めていただけると嬉しいです。