2021年2月末現在、子ども達はかなり幼い年齢水準から、ネット・スマホに触れています。一方で、そのネット・スマホの使い方について、保護者の立場で考えると、何からどう伝えていったらよいのか、お困りになることが多いと思います。
今回は、親子で考えるネット・スマホの使い方について、情報をまとめ考えます。
コンテンツ
(1) 統計から分かること
NTTドコモの社会科学系研究所である「モバイル社会研究所」が、毎年『モバイル社会白書』を発刊しています。その中の「第5章 子どものICT利用」の情報から、そこに書かれている概要をいくつか引用します。
第5章 子どものICT利用|2020年版|モバイル社会白書Web版|NTTドコモ モバイル社会研究所- スマートフォン所有率は、中学生になると6割程度に拡大していること
- スマートフォン利用率は、小1~小3では3~4割ほど。小6で過半数を超えて、中学生になると7割程度に拡大していること
- 毎日YouTubeを利用している小学生は3割を超え、中学生になると過半数となること
- 中学生になると、毎日LINEをする子どもは関東・近畿では約7割、北海道・東北・中部・東海・中国・四国・九州では約5割となること
- スマートフォン利用の親子間ルール「スマホを使うのは決められた時間だけ」「食事中にスマホを利用しない」は、小学校低学年でも6割以上が設定していること
- 小学校低学年から高学年になるにつれて、個人情報の公開や料金に関するルール設定率が拡大すること
- 中学生になると、オンラインでの人間関係についてのルール設定率が拡大すること
保護者と子どもたちとの間で、スマートフォンの利便性を求めつつもルール設定をしている様子が見て取れます。子どもたちにとって身近なネットへの接点はスマートフォンであり、パソコンではないようです(子どもの文字入力スキルは、スマートフォン側で特化している事実も、統計資料内で触れています)。
(2) 安全・安心な利用と、ルール作りに
ネット・スマホを安全・安心に利用するために、親子で考える・学べる情報のいくつかをご紹介します。
1) インターネットの安心・安全ハンドブック
内閣府サイバーセキュリティセンターが、無料で提供しているハンドブックです。PC・スマホで見られるほか、PDFファイルのダウンロード、印刷物としての配布が許可されています。amazon kindle で無料ダウンロードが出来ます
みんなでしっかりサイバーセキュリティ インターネットの安全・安心ハンドブック Ver.4.10それなりの文量ではありますが、イラスト・マンガが多く使われています。まずは、イラスト・マンガだけでも飛ばし読みしていただけると、親子で内容を確認できます。また、保護者の方は、必要な章をピンポイントで読んでもよいと思います。
2) スマホルールの作り方の参考に
ソフトバンクのWebサイト上に「親子で作るスマホルールリスト」を作成できる、特設ページがあります。
親子で作るスマホルールリスト | スマートフォン・携帯電話 | ソフトバンク
ここでは、ルールリストに「名前」を入れたり、ご家庭のオリジナルルールを追記したりできます。作成したものを印刷できますので、親子でよくお話しをしてルール設定する際の、拠り所になるのではないでしょうか。
3) 専門家による講演会・書籍を参考に
こうした分野に詳しい専門家の、講演会や書籍を参考にするのも良いです。
兵庫県立大学准教授・竹内和雄さんは、いじめと子どもとネット・スマホに関わる分野では、大変詳しい専門家です。
竹内さんは、私が2016年に下諏訪町で行なわれた長野県青少年インターネット適正利用推進フォーラムを聴講した折、講演された先生でした。中学教諭のご経験から語られる内容は、大変勉強になりました。
兵庫県立大学 竹内和雄研究室Twitter でも定期的に情報発信されていらっしゃいます。最近の記事では、コロナ禍を経て、子どもたち自身が「ネットへの依存度が深まり過ぎていて、抜け出したいのに抜け出せなくなっている危機感を、大人に訴えている」ことにフォーカスした内容を書かれています。
参加したフォーラムでは、駒ケ根工業高等学校の生徒さんが戦隊ヒーロー「コマレンジャー」として行なっている、サイバーセキュリティの啓発活動が紹介されていました。
現在でもその活動は継続していて、2020年12月の活動の様子が新聞記事になっていました。保護者や先生という立場で話すよりも、こうした近しい年代の子たちからのメッセージの方が、子どもたちに響くのかもしれません。
ネットの危険知って 駒ケ根工高の「コマレンジャー」伊那西小に登場:中日新聞Web絶対・正解のルールは無いからこそ
スマホは、より長く触れている子どもたちの方が、詳しくなっていきます。それは、単に操作している楽しさがあるからではありません。日々の生活でうまくいかないことや悩みがあった際にそれに寄り添ってくれる人、目立ちたい自分・こうなりたい自分という欲を満たしてくれる人、近しい友達が、ネット上にはたくさんいるからです。
そうした人たちを相手に、自分を見てほしい・受容してほしい・認めてほしいと子どもたちは思っているのかもしれません。或いは、嫌われたくない・気まずくなりたくないといった思いがあるのかもしれません。
ネットに潜む危険性よりも先に、自分自身の心の安定を求める気持ちが強くなるのは、子どもたちに限った話ではないように思います。
もちろん、ネット上には本当に親身に寄り添ってくれる人もいます。私自身、そうした人達と関わった経験がありますので、よくわかります。そうした関わりが、自身の世界を広げてくれた側面は、確実にあります。
一方で、そうでない邪な目的の人もいます。一時的に気持ちに寄り添い、本当に優しい人のように近づいてきます。直に会おうと誘ったり、写真を撮って送信を促したりする事例も、よく聞きます。はたから見ていれば怪しいとよくわかるのですが、当事者である子どもからすると、(それが仮初であったとしても)「心の安定」を満たしてくれている相手が離れていってしまうことの方が、怖いのかもしれません。
そういった意味では、大人や保護者の立場で、まず向き合うべきなのは、ネットやスマホといったものではなく、いま目の前にいる子どもたちそのものなのかもしれません。(このお話は、先程ご紹介した竹内先生が講演の中でおっしゃっていたことです。)
絶対・正解のルールが無いからこそ、都度、大人・保護者と子どもとがお互いによく話をして、ルールを作ったり変えていったりする機会を持ち続けることが、ルールそのものよりも大事なのではないか、と私は考えます。